NVIDIA考察

米国のプロパテント政策による世界制覇

2024年6月、一時、アメリカ半導体大手NVIDIAが時価総額世界一になった。

当社が行っているのは、半導体、GPUの設計だ。半導体はもともと、画像処理のものであって、3Dゲームをなめらかに動かすためのものであった。ところが、昨今、生成AIの学習や動作を飛躍的に高めることがわかり、その需要が鰻登りになった。当社の株価は、2023年位から上昇して今や世界のトップになった。(現在、時価総額約480兆円)それにGAFAの時価総額を足してみると、日本の東証プライム(現在1000兆円)をこれら2,3社だけでほぼ同等になってしまう。結果、日本と米国の体力差が異次元に広がっているのが現状だ。

半世紀前から米国のコピーライト政策が身を結んだ

米国が1980年代から進めたプロパテント政策だが、特許をはじめとした知的財産権による世界制覇の野望だ。

実際、特許大国が世界を制覇し、今では著作権大国が世界を制覇している。まさに米国の政策通りとなった。

米国は、時代を先取りしてまさに世界制覇に成功している。

政策の根本は「知力」活用政策

米国の政策の基本は「知力」を最大限に生かすということだ。特許であれ著作権であれ人間が持っている「知力」を最大限に生かすことを根底にこの政策がなされたということだ。

日本の無政策が悲劇を生む

今や日本の国際的な「デジタル赤字」は年間5兆円以上でインバウンド黒字3兆円を軽く超えている。日本は今や「デジタル小作人」と成り下がり毎年莫大なデジタル印税(著作権料)を海外に支払っているのが現状だ。そのような中、日本の政府が掲げているのは「資産運用立国」である。世界的に国力が停滞している今の日本においてさらなる知財システムの構築、技術者やクリエイターの保護育成をはじめ、新規産業文化の創出、社会保障制度の抜本的見直しなど、今の政府が一番に掲げなければならないことは他にあるだろう。

※現政府の資産運用立国とは、日本国民から金融資産を集め大資本や外資に配るシステムである。とある経済学者が主張している。(これは私たち国民一人一人が自分の頭で考えなければならない)

それでも「知力」を磨くしかない

NVIDIAは、産業区分で言えば製造業なのだが、半導体の設計を行っているだけで製造はしない。ファブレスだから工場も持っていない。(ファブレスとは工場なしという意味)

実際に製造するのは、台湾の受託製造会社であるTSMCだ。もともと、アップル社も同様、ファブレスの先駆けである。TSMC日本法人が熊本に設立されたことが話題であるが、そこで製造される半導体は旧半導体(40nm)に限られ次世代半導体(2nm)は製造されない。(大切な「知力」保護の一環としてとられた措置と思われる)日本の半導体企業ラピダスも現状では、旧半導体の製造に限られている。

ファブレスの基本となる版権ビジネス

ファブレスの基本となる「知力」がコピーライト(著作権)である。その設計図を版権として使用権を許諾し莫大な利益を上げるというビジネスモデルだ。著作権は世界に及び、死後70年もの長期にわたる。まさに米国プロパテント政策の成果である。日本では、長年、著作権の普及、教育が遅れてきた。そのことを深く反省しこれからの未来の日本人の「知力」をどう育んでいくのか、私たちが真剣に取り組まなければならない課題である。